Aufwachen
P32 A5 350円
2005/3/6 J.Garden初参加 新刊
漫画+短編小説
『悲愴』シリーズより紺×利



 彼の軌跡を煌く金の髪が彩り、いくつかの閃光を生み出す。勿体つけるようなその揺らめきは、事態に反してその場に居た全ての人間を魅了した。悲鳴と溜息と、利と同じように喘ぐ吐息、そしてアンプを通して爆発する音色。騒音の中の、一瞬の出来事だった。
「酸素だ!」
 ローディーが絶叫する。ステージの中央で倒れた利に触れようと、中央に黒い塊が集中する。これが最後の曲で良かったと、メンバー誰もが平然を装い安堵していることだろう。ぐったりとした利が両脇を抱えられ、ローディーに引きずられていく。彼の名を叫ぶ声が会場を圧迫しはじめる。

 ギターを背負い袖へと歩くと、雑誌で扇がれ口に酸素スプレーを宛てられた利が寝そべっていた。とぐろを巻いたシールドの上に投げ出された足は、白いタイツが伝線し、淡い紅色の肌を一筋晒している。
「無茶ばっかしてんな、コラ」
 若干巻いた舌に、利は反応を示さない。素人のローディーはそれに焦りの色を見せ、利の肩をしつこく揺する。
「俺が運ぶから、お前機材の片付けしとけ」
 ローディーは小さく返事を返し、背負っていたギターを受け取るように手を伸ばしてきた。それを無視し、軟体になってしまった利の腕を取り、肩に担ぐ。どちらも自分にとっては、他人に容易く触らせるようなものではない。


小説「眩暈」より――――

通販のご希望は「OFFLINE」にて承っております